2社間・3社間ファクタリングとは|仕組みと考え方の違い

2社間・3社間ファクタリングとは|仕組みと考え方の違い

2社間・3社間ファクタリングの違いを仕組みと考え方から、分かりやすく理解できるように説明しました。

2社間・3社間ファクタリングとは|仕組みと考え方の違い

ファクタリングを検討する際、必ず目にするのが「2社間ファクタリング」「3社間ファクタリング」という言葉です。

 

この区分は単なる専門用語ではなく、取引の仕組みそのものを表す重要な分類です。

 

どちらを選ぶかによって、手数料、スピード、

 

取引先との関係性、そしてリスクの所在が大きく変わります。

 

本記事では、2社間・3社間ファクタリングの仕組みを基礎から解説し、それぞれのメリット・注意点、そして自社の状況に合った選び方を詳しく説明します。

 

2社間・3社間という区分の意味

 

誰が関与する取引か
ファクタリングは、売掛金(売掛債権)を期日前に現金化する取引です。この取引に誰が関与するかによって、2社間と3社間に分類されます。

 

2社間ファクタリング

 

取引に関与するのは「利用者(債権者)」と「ファクタリング会社」の2社のみです。売掛先(債務者)は取引に直接関与せず、債権譲渡の事実も原則として知らされません。

 

取引の流れ(2社間)

 

  1. 利用者がファクタリング会社に売掛債権を譲渡
  2. ファクタリング会社が利用者に買取代金を支払い
  3. 売掛先から利用者に入金(通常通り)
  4. 利用者がファクタリング会社に入金額を支払い

 

この形態では、売掛先は債権譲渡の事実を知らず、通常通り利用者に支払いを行います。

 

3社間ファクタリング

 

取引に関与するのは「利用者」「ファクタリング会社」「売掛先」の3社です。売掛先に債権譲渡の通知を行い、了承を得た上で取引を進めます。

 

取引の流れ(3社間)

 

  1. 利用者がファクタリング会社に売掛債権を譲渡
  2. 売掛先に債権譲渡通知を送付し、承諾を得る
  3. ファクタリング会社が利用者に買取代金を支払い
  4. 売掛先がファクタリング会社に直接支払い

 

この形態では、売掛先が取引に直接関与し、支払い先がファクタリング会社に変更されます。

 

なぜこの分類が重要なのか

 

2社間と3社間の違いは、単に関与する企業の数だけではありません。この区分によって、以下の要素が根本的に変わります。

 

変わる要素

 

1. 手数料水準
2社間は手数料が高く(10〜30%程度)、3社間は低め(1〜9%程度)に設定されるのが一般的です。

 

2. 資金化のスピード
2社間は最短即日、3社間は数日〜1週間程度かかります。

 

3. 取引先との関係性
2社間は取引先に知られず、3社間は通知が必要です。

 

4. リスクの所在
2社間は利用者に回収リスクが残り、3社間はファクタリング会社がリスクを負います。

 

5. 審査の厳しさ
2社間は比較的柔軟、3社間は慎重な審査が行われます。

 

この区分を理解せずに選択すると、想定外の手数料負担や、取引先との関係悪化といった問題が発生する可能性があります。

 

2社間ファクタリングの特徴

 

メリット

 

1. 取引先に知られずに資金調達できる
最大のメリットは、売掛先に債権譲渡の事実を知らせる必要がない点です。

 

  • 取引先に資金繰りの状況を知られたくない
  • 今後の取引関係に影響を与えたくない
  • 取引先からの信用を維持したい

 

こうした場合に、2社間ファクタリングは有効な選択肢となります。

 

2. 資金化のスピードが速い
売掛先の承諾を得る必要がないため、手続きが簡潔です。

 

  • 最短即日での資金化が可能
  • 必要書類が比較的少ない
  • 審査から入金までが短時間

 

緊急の資金需要に対応しやすい形態といえます。

 

3. 審査のハードルが比較的低い
3社間に比べて、以下の点で審査が柔軟な傾向があります。

 

  • 売掛先の承諾が不要なため、手続きが早い
  • 利用者の事業状況も考慮される
  • 小口の債権でも対応してもらえる可能性が高い

 

4. 手続きの煩雑さが少ない
売掛先を巻き込まないため、以下の手間が省けます。

 

  • 売掛先への説明や交渉が不要
  • 承諾書の取得手続きが不要
  • 社内稟議や承認プロセスに時間を取られない

 

注意点

 

1. 手数料が高く設定される
2社間ファクタリングの手数料は、一般的に10〜30%程度と高めです。

 

手数料が高い理由

 

  • ファクタリング会社が回収リスクを負う
  • 売掛先の承諾がないため、債権の確実性が低い
  • 利用者が売掛金を使い込むリスクがある

 

300万円の売掛金を手数料20%で買い取った場合、受取額は240万円となり、60万円が手数料として差し引かれます。

 

2. 利用者に回収義務が残る
2社間では、売掛先からの入金を受け取った後、ファクタリング会社に支払う義務があります。

 

リスクのポイント

 

  • 入金された資金を他の支払いに使ってしまうリスク
  • 資金管理が不適切だと、二重の支払い義務が発生
  • 売掛先からの入金が遅れた場合の対応

 

この仕組みを理解せずに利用すると、資金繰りがさらに悪化する可能性があります。

 

3. 売掛先への通知リスクがゼロではない
原則として通知は行われませんが、以下の場合には通知される可能性があります。

 

  • 利用者がファクタリング会社への支払いを怠った場合
  • 契約違反があった場合
  • 売掛先の倒産など、特殊な事情が発生した場合

 

契約書に「どのような場合に通知されるか」が記載されているはずなので、必ず確認してください。

 

4. 悪質業者が紛れ込みやすい
2社間ファクタリングは、売掛先の関与がないため、仕組みを悪用した違法業者が存在します。

 

危険なサイン

 

  • 実質的に貸付の形態になっている
  • 継続的な支払いを求められる
  • 契約内容が不明瞭

 

業者選びは特に慎重に行う必要があります。

 

2社間ファクタリングが向いている状況

 

2社間ファクタリングが適しているのは、以下のような状況です。

 

1. 取引先に知られたくない場合

 

  • 新規取引先で信用関係がまだ浅い
  • 大口の取引先で、関係性を重視したい
  • 業界内での評判を気にする必要がある

 

2. 緊急で資金が必要な場合

 

  • 支払い期限が迫っている
  • 即日〜数日以内に資金化が必要
  • 他の資金調達手段が間に合わない

 

3. 少額の債権を現金化したい場合

 

  • 売掛金の金額が比較的小さい
  • 3社間では対応してもらえない規模
  • 柔軟な対応を求める

 

4. 手数料負担を許容できる場合

 

  • 手数料を支払っても、資金化のメリットが大きい
  • 取引先との関係維持がそれ以上に重要
  • 緊急性が高く、コストより速度を優先

 

3社間ファクタリングの特徴

 

メリット

 

1. 手数料が大幅に安い
3社間ファクタリングの最大のメリットは、手数料の安さです。

 

  • 一般的な手数料:1〜9%程度
  • 2社間と比べて10〜20%程度安い
  • 大口取引ではさらに有利な条件が得られる可能性

 

同じ300万円の売掛金でも、手数料5%なら受取額は285万円となり、2社間の240万円と比べて45万円も多く受け取れます。

 

2. 利用者の回収義務がない
売掛先がファクタリング会社に直接支払うため、利用者は回収の責任から解放されます。

 

メリットの詳細

 

  • 入金管理の手間が不要
  • 二重支払いのリスクがない
  • 資金の使い込みの心配がない
  • 売掛先の支払い遅延リスクをファクタリング会社が負担

 

3. 取引の透明性が高い
売掛先も関与するため、取引全体の透明性が確保されます。

 

  • 契約内容が明確
  • 各社の役割と責任が明確
  • トラブル発生時の対応が明確

 

4. 継続利用で条件が良くなる可能性
3社間での取引実績を積むことで、以下のメリットが期待できます。

 

  • 手数料のさらなる引き下げ
  • 審査の簡略化
  • 利用限度額の拡大
  • より迅速な対応

 

注意点
1. 売掛先に債権譲渡を知られる
3社間ファクタリングでは、必ず売掛先に通知を行います。

 

懸念されるリスク

 

  • 資金繰りの悪化を疑われる可能性
  • 今後の取引条件に影響する可能性
  • 業界内で噂が広まるリスク
  • 取引停止や減額を打診される可能性

 

売掛先との関係性や業界の慣習を考慮する必要があります。

 

2. 資金化に時間がかかる
売掛先の承諾手続きが必要なため、時間がかかります。

 

一般的なタイムライン

 

申込から審査:1〜2日
売掛先への通知と承諾:2〜5日
契約締結と入金:1〜2日
合計:数日〜1週間程度

 

即日での資金化を求める場合には適していません。

 

3. 売掛先の承諾が得られないリスク
売掛先が債権譲渡を拒否する可能性があります。

 

拒否される理由

 

  • 社内規定でファクタリングが認められていない
  • 債権譲渡条項が契約書に含まれている
  • 取引先の資金繰りを懸念
  • 手続きの煩雑さを嫌う

 

承諾が得られない場合、資金調達自体ができなくなります。

 

4. 審査が厳しい傾向
3社間では、以下の点で審査が厳格になる傾向があります。

 

  • 売掛先の信用状況が重視される
  • 債権の確実性が問われる
  • 取引の継続性が確認される
  • 利用者の事業内容も精査される

 

2社間に比べて、審査に通らないケースもあります。

 

3社間ファクタリングが向いている状況

 

3社間ファクタリングが適しているのは、以下のような状況です。

 

1. 手数料負担を抑えたい場合

 

売掛金の金額が大きい
手数料の差が受取額に大きく影響する
継続的に利用する予定がある

 

2. 取引先との関係が安定している場合

 

  • 長期的な取引関係がある
  • 相互の信頼関係が構築されている
  • ファクタリング利用に理解がある取引先

 

3. 時間的余裕がある場合

 

  • 支払い期限まで1週間以上ある
  • 計画的な資金調達が可能
  • 緊急性が高くない

 

4. 大口の債権を現金化したい場合

 

  • 売掛金が数百万円以上
  • 手数料の差額が大きくなる
  • 安全性と確実性を重視

 

よくある誤解と判断ミス

 

ファクタリングの利用を検討する際、2社間・3社間の選択で多くの事業者が犯しがちな判断ミスがあります。

 

  • 早さだけで2社間を選ぶケース
  • よくある思考パターン
  • 「急いでいるから2社間しかない」
  • 「即日対応なら2社間一択だ」

 

問題点

 

確かに2社間は資金化が早いですが、本当に即日である必要があるかを冷静に検討すべきです。

 

検討すべきポイント

  • 支払い期限は本当に今日なのか
  • 2〜3日の猶予はないのか
  • 取引先に交渉して支払いを少し待ってもらえないか
  • 手数料の差額(10〜20%)を支払う価値があるか

 

例えば、500万円の売掛金を2社間で手数料20%(100万円)、3社間で手数料5%(25万円)で現金化した場合、その差は75万円にもなります。

 

数日の時間的余裕があるなら、3社間を検討する価値は十分にあります。

 

本当に急ぐべき状況とは

 

  • 本日中に支払いを完了しないと、取引先との関係が破綻する
  • 従業員への給与支払いが今日中に必要
  • 重要な仕入れの期限が今日まで

 

これらに該当しない場合は、2社間を選ぶ前に一度立ち止まるべきです。

 

条件を理解せず3社間を避けるケース

 

よくある思考パターン

 

「取引先に知られたくないから3社間は絶対に使わない」
「3社間は売掛先に悪い印象を与えるはずだ」

 

問題点

 

3社間ファクタリングに対する過度な警戒心が、有利な選択肢を最初から排除してしまっています。

 

実際の状況

 

近年、ファクタリングは一般的な資金調達手段として認知されつつあります。

 

特に以下のような取引先では、ファクタリング利用に対する理解があるケースも多いです。

 

  • 大手企業や上場企業
  • 建設業界や製造業など、ファクタリングが普及している業界
  • 長期的な取引関係がある企業
  • 自社もファクタリングを利用したことがある企業

 

検討すべきポイント

  • 取引先は本当にファクタリングを嫌うだろうか
  • 過去にファクタリング利用を伝えた事例はないか
  • 業界内でファクタリングは一般的ではないか
  • 手数料差額を支払ってまで隠す必要があるか

 

例えば、長期取引がある大手企業であれば、「資金効率を高めるため」と説明することで、むしろ経営の健全性をアピールできる可能性もあります。

 

適切な判断基準

 

2社間・3社間の選択は「絶対に知られたくない」という感情ではなく、以下の現実的な判断基準で行うべきです。

 

  • 取引先との関係性の深さ
  • 業界の慣習
  • 手数料差額の大きさ
  • 時間的余裕の有無
  • 今後の取引継続の重要度

 

当サイトの判断軸で見る2社間/3社間

 

状況との相性という考え方

 

当サイトでは、「2社間が良い」「3社間が良い」という一律の評価は行っていません。

 

なぜなら、どちらが適しているかは利用者の状況によって異なるからです。

 

状況別の判断軸

 

資金の緊急性

 

  • 即日〜2日以内:2社間が有利
  • 3日〜1週間:両方検討可能
  • 1週間以上:3社間も含めて比較

 

売掛金の金額

 

  • 100万円未満:手数料差が小さいため2社間でも可
  • 100〜500万円:状況に応じて検討
  • 500万円以上:手数料差が大きいため3社間を優先検討

 

取引先との関係性

 

  • 新規・浅い関係:2社間が無難
  • 中長期の取引:3社間も検討可能
  • 長期的な安定取引:3社間が有利

 

手数料の許容度

 

  • コストより速度優先:2社間
  • バランス重視:状況次第
  • コスト最重視:3社間

 

継続利用の予定

 

  • 単発利用:2社間でも可
  • 定期的な利用:3社間で関係構築が有利
  • 頻繁な利用:3社間で条件改善を狙う

 

比較ポリシーへの接続
当サイトのファクタリング比較では、以下の方針で情報を整理しています。

 

1. 利用者の状況を前提とした情報提供
「どの業者が良いか」ではなく「あなたの状況ならどの選択肢が合うか」という視点で情報を提供します。

 

2. 2社間・3社間の両方に対応する業者を優先
選択肢を持つことが重要なため、両方に対応している業者を中心に紹介します。

 

3. 手数料の透明性を重視
2社間・3社間それぞれの手数料を明確に提示している業者を評価します。

 

4. 状況変化への柔軟性
最初は2社間で始めて、関係構築後に3社間に切り替えられるような業者を推奨します。

 

これらの方針により、利用者が自分の状況に最も合った選択ができるよう支援しています。

 

まとめ:どちらが正解かではなく、どちらが合うか2社間・3社間ファクタリングについて、重要なポイントをまとめます。
理解すべき基本です。

 

  • 2社間は「速さと秘密性」、3社間は「低コストと透明性」
  • 手数料差は10〜20%程度にもなる
  • どちらが優れているかではなく、状況に合うかが重要

 

判断する際のポイント

 

本当に今日・明日中に必要か、冷静に確認する
手数料差額を計算し、許容できるか判断する
取引先との関係性を客観的に評価する
「絶対に知られたくない」という感情だけで決めない
複数の業者に両方の条件を聞いて比較する

 

避けるべき判断ミス

 

  • 「急ぐ=2社間」という短絡的な判断
  • 「知られたくない=3社間は絶対NG」という思い込み
  • 手数料を確認せずに決める
  • 1社の条件だけで判断する

 

最も重要なこと

 

ファクタリングは資金調達の手段です。

 

目的は「資金を得ること」であり、「2社間を使うこと」「3社間を使うこと」ではありません。

 

自社の状況、取引先との関係、資金の緊急性、許容できるコストを総合的に判断し、最も合理的な選択をすることが重要です。

 

どちらが正解ということはありません。

 

あなたの状況に合うのはどちらか、という視点で判断してください。