


ファクタリングを利用する際、多くの事業者が契約書をじっくり読む余裕がありません。特に資金繰りが逼迫している状況では、以下のような理由で契約書の確認が疎かになりがちです。
こうした状況が重なると、契約書を説明の補足資料のように扱ってしまい、重要な条項を見落とすリスクが高まります。
本記事では、実際に起きた契約トラブルの事例をもとに、ファクタリングで後悔しないための契約書チェックポイントを解説します。
ある小規模事業者が経験した、典型的な契約トラブルのケースをご紹介します。
利用者の状況
この事業者は複数社に問い合わせを行い、条件や対応のバランスが良いと感じた1社と契約を進めることにしました。
契約までのやり取りと安心感
担当者からは以下の説明がありました。
説明は分かりやすく、対応も丁寧だったため、この事業者は特に不安を感じることはありませんでした。その後、「契約書をお送りしますので確認してください」との連絡を受け、PDFで契約書が送られてきました。
契約書確認時に起きた見落とし
送られてきた契約書は数ページにわたるもので、以下のような特徴がありました。
この事業者は契約書の内容を確認したものの、全体の流れを追う程度にとどまり、細部まで理解することなく署名して返送してしまいました。
予期せぬ事態の発生
問題が顕在化したのは、契約後しばらく経ってからでした。売掛先からの入金が予定より遅れた際、ファクタリング会社から突然連絡が入りました。
その内容は以下のようなものでした。
この事業者は「そんな話は聞いていない」と伝えましたが、ファクタリング会社側からは「契約書の○条に明記しています」との回答がありました。
契約書を読み返して分かった事実
改めて契約書を詳しく読み返すと、確かにその内容が記載されていました。事前の口頭説明では触れられていなかった条項でしたが、契約書には明確に書かれていたのです。
この時点で、契約書をしっかり読んでいなかったことを後悔しても、すでに手遅れでした。
見落としの3つの要因
このケースで問題だったのは、契約書をまったく読んでいなかったことではありません。以下の3つの要因が重なって、重要な条項を見落としてしまいました。
要因1:重要な条項の識別ができなかった
契約書の中で、どの条項が自分にとって重要なのかを判断できませんでした。すべての条文が同じように見え、優先順位をつけられなかったのです。
要因2:説明と契約書の内容を照合していなかった
口頭で受けた説明と、契約書に記載されている内容を一つひとつ照らし合わせる作業を怠りました。説明で触れられなかった条項こそ、注意が必要だったのです。
要因3:不利になるケースを想定していなかった
「通常は問題にならない」「多くの方がこの条件で利用しています」といった説明を受けたことで、自分に不利な状況が起こる可能性を想定しなくなっていました。
心理的な要因:安心感が判断を鈍らせる
担当者の対応が丁寧だったことや、説明が分かりやすかったことが、逆に油断を生む原因となりました。
「この会社なら大丈夫だろう」という安心感が、契約書を批判的に読むという姿勢を失わせてしまったのです。
ファクタリングの契約書トラブルは、決して珍しいものではありません。実務上、よく見られるパターンを5つご紹介します。
パターン1:条件変更時の取り扱い
売掛先の状況変化や入金遅延など、条件が変わった場合の対応について記載されている条項です。通常時は問題になりませんが、トラブル発生時に初めて重要性が分かります。
パターン2:想定外の状況での責任の所在
契約時に想定していなかった事態が発生した際、誰がどのような責任を負うのかを定めた条項です。曖昧な記載の場合、トラブルが拡大する原因となります。
パターン3:利用者側に不利な対応が取られるケース
ファクタリング会社側に一方的に有利な条件が記載されていることがあります。これらは補足的な条文として書かれていることが多く、流し読みでは見落とされがちです。
パターン4:追加費用が発生する条件
手数料以外に費用が発生する条件について記載されている条項です。どのような状況で追加費用が発生するのか、事前に把握しておく必要があります。
パターン5:解約や契約終了に関する条件
契約を途中で解約したい場合や、契約が終了する際の手続きについての条項です。違約金や解約手数料が発生するケースもあります。
この事例を教訓に、契約前に必ず確認すべきポイントを整理します。
1. 説明内容と契約書の記載が完全に一致しているか
口頭で受けた説明の内容が、契約書にすべて反映されているかを確認しましょう。説明で触れられなかった条項がある場合は、特に注意が必要です。
2. 条件が変わるのはどのような場合か
手数料や買取条件が変動する可能性について、具体的な条件を確認してください。「状況により変動する」といった曖昧な表現には注意が必要です。
3. 想定外の事態が起きたときの対応
売掛先の倒産、入金遅延、連絡が取れなくなった場合など、トラブル発生時の対応について明確に記載されているかを確認しましょう。
4. 追加で費用が発生する可能性とその条件
手数料以外に、どのような名目で費用が発生する可能性があるのかを把握してください。事務手数料、調査費用、遅延損害金などが該当します。
5. 契約解除や途中解約の条件
契約を中止したい場合の手続きや、違約金の有無について確認しましょう。解約条件が厳しい場合、トラブル時の選択肢が限られてしまいます。
6. 債権譲渡の通知に関する条項
2社間ファクタリングの場合、どのような状況で売掛先に通知が行われるのかを確認してください。予期せぬタイミングで通知されると、取引関係に影響が出る可能性があります。
7. 契約書に記載されていない「口頭説明のみ」の内容
口頭で説明を受けたものの、契約書に記載されていない内容がある場合は、書面での追記を求めましょう。書面に残っていない約束は、後から証明することが困難です。
契約書の本来の目的
契約書は、取引がスムーズに進んでいるときのための書類ではありません。本来の目的は、以下のような状況で参照するためのものです。
この視点で契約書を読むと、確認すべきポイントも自然と変わってきます。
「問題が起きたとき」の視点で読む
契約書を読む際は、以下のような質問を自分に投げかけてみてください。
これらの「もしも」を想定しながら読むことで、重要な条項を見落とすリスクが減ります。
テクニック1:チェックリストを作成する
確認すべき項目をリスト化し、一つひとつチェックしていく方法です。以下のような項目を含めると良いでしょう。
テクニック2:不明点は必ずその場で質問する
理解できない条項や専門用語があれば、署名前に必ず質問してください。「後で調べればいい」と思って放置すると、後々トラブルの原因になります。
テクニック3:第三者に確認してもらう
可能であれば、顧問税理士や弁護士など、専門知識を持つ第三者に契約書を確認してもらいましょう。客観的な視点からアドバイスを受けることで、見落としを防げます。
当サイトでは、ファクタリング会社を比較・紹介する際、以下の基準を重視しています。
評価の3つの柱
1. 条件の明確さ
手数料や買取条件が具体的に提示されているか
2. 契約内容の分かりやすさ
専門用語が適切に説明されており、利用者が理解しやすい契約書か
3. 説明と書面の一致
口頭説明と契約書の内容に齟齬がないか、透明性の高い対応か
これらの基準を満たしている業者こそが、利用者にとって信頼できるパートナーとなると考えています。
ファクタリング契約で後悔しないための重要なポイントをまとめます。
ファクタリングは、契約内容を正しく理解したうえで使えば非常に便利な資金調達手段です。
しかし、契約書を軽く扱うと、後から修正できない深刻な問題に発展する可能性があります。
時間がない状況でも、契約書の重要性を忘れず、一つひとつの条項を慎重に確認してください。
その手間を惜しまないことが、後悔しないファクタリング利用の第一歩となります。
※本記事の内容は、「ファクタリング naviドットコムのファクタリング比較ポリシー」に基づいています。